ジュリエットからの手紙

ジャニヲタなライターの戯言です

【レポ・感想】桐山照史主演舞台「赤シャツ」大千穐楽

桐山照史主演舞台「赤シャツ」

9月5日東京建物BrillaHALLを皮切りにスタートしたこの舞台も

9月28日の大阪森ノ宮ピロティホールで無事大千穐楽を迎えました。

コロナ禍の中無事に全公演を完走できたこと、ファンとしても

大変うれしく思っています。キャストの皆様、スタッフの皆様、オタクの皆様

お疲れさまでした。大千穐楽も終えましたので若干のネタバレを含む感想をレポをしたためたいと思います。

桐山照史の役者としての大きな成長を感じた「赤シャツ」

初日観劇の際もブログを書きましたが、一幕の赤シャツ登場のシーン。

桐山くんの第一声を聞いた誰もが瞬時に「赤シャツ」はこんなキャラなんだと理解できたのではないかと思います。

私は常日頃から舞台には2種類あると思っていて、1つは初日からなだらかなカーブを描いて完成度を高めていくもの、もう1つは初日から完全に固まっていてそれに演者が若干の遊び心を加えながら終演まで持っていくもの。

私は「赤シャツ」に関しては間違いなく後者だと感じています。

錚々たる実力派揃いのキャストという条件ももちろんだと思いますが、前回の舞台「泣くロミオと怒るジュリエット」がコロナ禍で上演中止になってしまった悔しさと

不完全燃焼のパワーを全て今回の舞台にぶつけてきた桐山くんの意地のようなものを感じずにはいられませんでした。また今回の舞台までに積んだドラマを通じての経験や自らが勉強し得た実力をもって、この舞台に臨んだのだなと感じました。それほど「赤シャツ」は初日から完璧でした。

当時使われていた難しい言葉や独特の言い回し、イントネーションを含むとんでもない長セリフもよどみなく話す桐山くん。時として長セリフの場合「一生懸命覚えました」という必死さが伝わりすぎるケースもあるのですが今回はとても自然。見ている人は自分がその物語を実際に読んでいるかのような感覚でスッとセリフが伝わってきたのではないでしょうか。

ヒール役を愛すべき主人公として演じる

実際に夏目漱石の「坊ちゃん」を読んだことがある人なら「赤シャツ」は嫌味なインテリというイメージだと思うのですが、舞台の「赤シャツ」は世間体を気にしながら、弟に負い目を感じ、女子に翻弄され、真っすぐで破天荒な坊ちゃんたちに好感をもつ実に人間味あふれる人物として描かれています。

学校の教師たちには毅然と、積極的な女子たちにはアタフタし、母のようなお手伝いさんには甘えてみせる。赤シャツでなくとも人は誰でも相手によってキャラ変することってありますよね。それを声と表情、立ち振る舞いで実に巧みに演じ分けていることからも役者・桐山照史の大きな成長を感じました。

これから10年先、20年先の世界は自分たちのように世間を上手く立ち回っていく人間だらけになるのだろう、そんな世界は嫌だと憂う赤シャツ。

そんな赤シャツの想いは学校を辞め「清々した」と愛媛を後にする坊ちゃんには届くことはありませんでした。

良い意味での余裕

そしてもうひとつ、桐山くんの大きな成長を感じたのは今回の舞台が初舞台となる後輩の松島聡くんとのやりとり。松島くん演じる弟の武右衛門とは終始ぶつかり、時には取っ組み合いの喧嘩になるのですが、どの場面でも終始松島くんが伸び伸びと演じられるように間合いを計っていたのが印象的でした。後輩との共演はこれまでにもありましたが、良い意味での”余裕”を感じられたことも一ファンとしてとても嬉しく感じました。

 

千穐楽のカテコで「またこの赤シャツで…」と口にし「言っちゃった!でも言っとけばなんとかなるやろ」と笑顔で語った桐山くん。大千穐楽満席の会場からの大きな拍手を聞き、客席を愛おしそうに見つめた目が全てを物語っていたように感じました。

 

「赤シャツ」は役者・桐山照史の代表作となる舞台になる、今後、役者としての桐山照史を語る際に「赤シャツ」という舞台なくしては語れない作品になったのではないかと思います。できることならば再びこのキャストで新たな「赤シャツ」を見てみたいなと思っています。